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【書籍】「文系と理系はなぜ分かれたのか」のご紹介

こんにちは!スギヤマケイです。

この記事では、書籍「文系と理系はなぜ分かれたのか」(隠岐さや香 著、星海社新書)をご紹介します!

12月に参加したSTSカフェの話題提供者だった隠岐さや香さんの著作が気になって読んでみました。人類の知識が増えるに従って細分化されていった学問とその捉えられ方の歴史や職業、思想との関連など、「文系と理系」に止まらない学問と社会の関係史が濃密かつ簡潔にまとめられた一冊でした!

 

この本の筆者である隠岐さや香さんは、科学史科学社会学の研究者です。科学が社会の中で位置付けられてきた役割や、社会の変遷と科学の変遷の関わりを研究されており、その知見に基づいて「文系と理系」をテーマに著されたのがこの本です。

第1章 文系と理系はいつどのように分かれたか? --欧米諸国の場合
第2章 日本の近代化と文系・理系
第3章 産業界と文系・理系
第4章 ジェンダーと文系・理系
第5章 研究の「学際化」と文系・理系

 

第1章ではまず、12世紀頃のヨーロッパにおける大学の成立とその後の専門分化が取り上げられています。

現代で「文系と理系」の分岐が主に起こるのは、大学での専門教育に備える段階です。「文系と理系」を考えるにあたっては、まず“専門”がどう生まれたかという歴史に立ち返ることが重要となります。

神学、法学、医学の専門職養成の前段階として大学で教えられていた7つの教養科目の存在から、出版革命による知識の流通と研究の勃興、王権に支えられた研究者コミュニティの発展、大学の研究機関化、といった流れの中で、知識や研究の分野は専門分化が進むと同時にいろいろなまとめ方で分類されてきました。

現代に続く学術研究が打ち立てられ始めた当初から学問分野の分類についていろいろな意見が交わされていたという事実はとても興味深く感じます。 

 

第2章では、明治維新後の日本において富国強兵政策の一環で高等教育が扱われたことによる「文系と理系」の分岐が描かれています。

日本では近代化に際して、産業の基盤に繋がる工学と政治機構の基盤に繋がる法学が重要視されました。総合大学のなかに工学部が置かれたのは、実は東京大学が世界初だそうです。

近代化の中で徐々に実用に繋がる分野を重視する風潮が形作られていき、軍部の台頭と全体主義化の中で、軍備に役立つ理工系(理系)とそうでない人文社会系(文系)という分け方が生まれました。

文理の二分は戦後の製造業を中心とした産業発展を背景とするイノベーション推進政策においても受け継がれ、欧米も含めて世界的に“儲かる仕事に繋がる理系”と“儲かる仕事に繋がらない文系(特に人文学)”という認識が広がっていった様子が第3章で描かれています。

 

「文系と理系」の対立問題はジェンダー課題にも繋がっています。

第4章では、男女の役割分担についての古来からの意識や向き不向きに関する先入観が、高等教育における分野選択意向や選択に際しての性差別、初等・中等教育での分野ごとの自己効力感の性差に結びつき、そしてこの性差は徐々に縮まっていることが述べられています。

 

21世紀に入り複雑化していく社会では、1つの課題に対して複数の課題が関連し、解決のために様々な知識が必要です。

第5章では、分化してきた専門分野の間を繋ぎ、複雑な課題に対処しようと試みる学際的な取り組みの潮流が語られています。

学問を統合、俯瞰しようとする取り組みは、実はどの時代にもありました。「リベラルアーツ」や「教養」が流行語になる現代では、この取り組みへの意識が強まりつつあるように感じます。

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「文系と理系はなぜ分かれたのか」(隠岐さや香 著、星海社新書)

第4回てなんだサロンでお招きした原圭寛さんの研究とも重なる内容でした。

中世ヨーロッパでの科学の誕生から社会の変遷と学問の分化、21世紀の現代に学問が相対する課題までが、様々な文献や先行研究に基づいて濃密にまとめられています。

その中で隠岐さんは「多様性」の大切さを強調されていました。

現代社会では様々な課題同士が複雑に絡み合い、その中では時にステークホルダー間の根深い対立も抱えています。課題を解決してより良い社会を作っていくためには、社会を様々な側面から見て全体を俯瞰する視点が必要です。そのために、多様な知識や背景を持つ人々の存在と協調が重要になります。

私のようなコミュニケーターの活動意義にも直結する観点です。わかりやすく富に繋がる分野だけでなく、他者の意図や文脈、歴史を理解する人文学や、世界の在り様を理解する自然科学などの知識と方法論がますます重要になってくると私は考えています。

 

「文系と理系」のテーマから出発して学問を俯瞰しつつ、現代社会に必要な観点まで体系的に教えてもらえる一冊でした。

サイエンスコミュニケーションに関係する方には特におすすめします!

bookclub.kodansha.co.jp

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